接着と塗装の実験(5)

ようやく塗装を全て終わらせ、接着と塗装の実験はひと段落しました。この実験で試したこととわかったことをまとめていきたいと思います。

この実験の一番の目的は、マスラックスのつくる木の彫刻作品の制作と、液体ガラス工程の手順の見直しでした。今回の手順は、以下のようになります。

  1. CNCで荒削り加工する
  2. 接着する
  3. 手作業で仕上げる
  4. 80度のお湯で温浴4時間
  5. 液体ガラスに冷浴4時間(木ごころ)
  6. 乾燥させる
  7. 液体ガラス2層目(木あじシーラー+木あじ)
  8. 液体ガラス3層目(テリオスウッド+つや消し剤)

今回の実験では「木を接着し80度のお湯に耐えられる接着剤を何にするか」「木を仕上げた後にお湯につけて変形しないのか」の2つがポイントでした。

分かったこととしては、

  • やっぱり、接着剤は耐熱性の変成シリコンにするべし
  • お湯につけると変形は避けられない。ならどうする?

ということです。接着剤に関しては、液体ガラスを接着剤代わりに使ってみたのですが、弾性がないので剥がれやすかったのだろうと思います。なのでおそらく、乾燥してもプニっとする変成シリコンのものがよいのではないか・・。それが木の変形に耐えられる接着方法になればよいのだけど、木の大きさや木目方向や種類によっては変形に負けることは絶対にあると思います。なので、もう少し工夫しないといけないです。

もしかすると、変形することを想定した修正(今回のクランプなど)を行えばよいのかもしれないし、そもそもの木彫の設計を見直すとよいのかもしれない(金属のネジなどを入れ、うまくネジを隠すような設計など)。

屋外でテスト

この小さなハトは、スギとスプルースの試作です。接着剤と液体ガラス工程の実験としてつくりました。変成シリコンの接着剤で貼り合わせています。きちんとお湯に4時間、液体ガラスに4時間、そして、2層目・3層目の液体ガラスも塗り終わったものです。液体ガラスの工程としては、一応完璧に施工したものになります。完璧だと14年間もちます!

大きさが小さいことと、中が空洞ではないので、変成シリコンの接着剤でうまくいっています。あとは、サイズを大きくしたり、中を空洞にしたり、設計しなおして、完璧になりたいところです。ヒノキのハトは中が空洞なのですが、中が詰まったものと比べて貼り合わせ面積が減るので、接着が剥がれやすかったのだと思います。

以下はまだ考え中のことなのだけど、メモしておきます。


木の変形と貼り合わせについて

木の変形と貼り合わせについて、いろいろ調べていると、ポリエチレングリコールというものがあって、常温でロウのような個体になり、徐々に水分と置き換わっていく塗料のことを知りました。液体ガラスの原理と同じような、「細胞のすみずみの水分と置き換わっていく」のだそうです。

そしてこの技術、木製の出土する遺物の保存に使われるらしく、いろんな博物館などの情報がありました。そして、「奈良文化財研究所」の説明がわかりやすくて、木によって染み込み方が違って立派ものほど中まで染み込まないそう。このページの言葉を借りると「おでんや煮物などを作るときに、食材の大きさやかたさによって、中まで味がしみるのにかかる時間が違うように、」と。これは!今使っている「液体ガラス」をつくっている会社の社長さんが「おでんを見ていてひらめいた」と言ってて、温浴と冷浴の工程とリンクしています。塗装とおでんは近いんだな。

しかも、奈良文化財研究所のページでは、ポリエチレングリコールのタンク内で約3年半、染み込ませた井戸の部材の写真がありました。

ここで、このポリエチレングリコールを染み込ませる方法は、まだ違うかなと思いました。もちろん木の処理に時間をかければよい作品はできそうですが、それよりも、木を貼り合わせる設計のほうを見直すべきではないかな、と思いました。木の処理に比べれば、設計のほうにはまだまだ余白があるはずです。


木の接合について

木の接合について、いろいろ調べました。日本に伝わる何種類もある木の継ぎ手は、とても魅力的なのですが、かなり手加工が必要で宮大工さんのように修行も必要そうです。たぶんそれができるなら、CNC使ってないでしょう。

次に「契り(ちぎり)」という方法。テーブルの天板などで割れに砂時計みたいな形の木を嵌め込む方法です。伝統的な継手よりシンプルでよいのですが、これも手作業が必要で、硬い種類のウォールナットみたいな木を契りにするらしく、きっとハトの背中やお腹に違う色の木が見えることになります。リボンみたいになって、これはこれでよいかもしれないけど、もう少しなんとかできないかな。

金物を調べると、とてもよいサイトがありました。「木材の接合に便利な接合金物72個」。ここに出てくる「あいくぎ」や「なみくぎ」「かすがい」などなど、いろいろな知恵がすごい。じっくり眺めて頭の中に入れておきます。


設計について

そして設計について。そもそも、アジの開きみたいにパカっと2つに割ったものを貼り合わせるから、割れたら大きく目立ってしまう。ハトの背中を見ながら「契り」が入ったところをイメージしたり、きれいな半分に割れるんじゃなくデコボコさせたり、3分割してみたり、いろいろ考えています。でも、まだこれだというアイデアが思いつきません。作って考えるしかないですね。

ひとまず、接着と塗装の実験は、これで終わりにして、設計を詰めていくことにします!